先週の金、土に、名古屋と大阪にライヴに行ってきた。5月に配信開始予定の「感謝の歌」と「メイフィールド」の先行のお披露目だ。
16日(金)の名古屋は、僕のこの2曲をリリースするDJ刃頭率いるインディーズ“音韻王者REC.”のレーベル本格オープン記念のクラブ・イベント。今後名古屋で毎月1回恒例となるイベントの初回だ。僕は3年くらい前まではクラブ・シーンでDJプレイによるトラックをバックに頻繁に歌っていたが、その後から現在までは、僕の本来のライヴスタイルであるバンド演奏をライヴハウスやホールで行なう様式のほうにライヴ活動の中心を戻していた。その結果生まれた曲が「感謝の歌」と「メイフィールド」なのだが、これを今回初めてDJ刃頭のプレイに乗せてクラブ・シーンで歌った。ダンス・フロア向けとは言いがたいこの2曲が、はたしてクラブ・イベントに集まった若いお客たちに、はたして受け入れてもらえるのかどうか正直言って不安だった。刃頭君をはじめとする音韻王者RECのスタッフの人たちの、「この2曲はクラブ・シーンという枠を飛び越えて多くの人々の心に届けたい。まずは今夜のクラブ・イベントから、その第一歩を始めるだけのことです。」という熱意の言葉を心の支えとした。
その日は朝から風邪を引いたらしく少し体調が思わしくなかったので、リハーサルを終えると僕はホテルの部屋で3時間以上休息をとった。休息といっても、やはりライヴのことが頭から離れない。悶々とした孤独な時間が過ぎた。僕がクラブ・イベントに出演する時はいつもそうだが、この夜も自分の出番の3、40分前に会場入りした。深夜1時半頃会場に入ると大御所 刃頭師のDJタイム中。会場は盛り上がっている。彼の熱くて奇想天外なDJプレイにあわせて、楽屋で僕も体を揺らして気持ちを高めていった。風邪気味だということなど、この時点ですっかり忘れてしまっていた。
そしていよいよ僕の出番。まずは僕の往年のクラブ・ヒット曲で、お客と自分自身をその気にさせていく。そして刃頭君と僕が過去にコラボした曲へと続く。お客のノリは元気いっぱいだ。この流れで、ほぼ会場全体をニューORITOの磁場の入り口へと引っ張ってこられたと思う。そして、ひとしきり新曲と音韻王者RECのことをMCしたあと、メイフィールドを歌った。僕はこの曲をライヴで歌うときはいつも、イントロでお百姓さんが鍬で畑を耕して額の汗を拭う様子を全身で演ずる。あるいはこの土臭いパフォーマンスのせいで、目の前の若いお客の抱くこれまでのORITOのイメージが崩れ落ち、失笑を買うかもしれないという不安で、この時がこのライヴ最大の緊張の瞬間だった。不安は杞憂に終わった。お客は食い入るように僕の歌とパフォーマンスの描く、五月野農場の長閑な光景の中に入り込んできた。僕がフックの「メイフィールド♪」というフレーズを歌うと、お客は初めて聴くこの曲をまるで以前から聴き込んでいたかのように、「メイフィールド♪」とコーラスを合掌した。目の前のこの光景が、僕には信じられなかった。その直後から僕は完全に忘我の世界へと入っていった。だから次の感謝の歌やLife Time Storyのライヴの光景があまり思い出せない。おぼろげに憶えているのは、感謝の歌を歌っているとき、感謝の歌はスウィートでもロマンティックでもセクシーでもない生活感丸出しの泥臭いド演歌ソウルなのに、なぜか若い女の子たちがキャーキャー叫んでフロアからステージ上の僕に握手を求めてきたことを不思議に思ったこと(もしかすると僕ORITOはソウル界の 氷川きよし なのかも?)や、曲の後半のアドリブ部分で僕は「…に感謝したい!」と繰り返し歌うたびに、お客が「イェー!」とか「おー!」とか叫んで、それがまるで黒人教会ミサでの牧師と信者のコール&レスポンスのようだったことだ。10分近くのロング・ヴァージョンを歌い切ると、何人かのお客が涙ぐんでいるのがステージから見えた。
ステージが終わり楽屋に戻ると、ひっきりなしにお客やイベント出演者たちが僕に「感動しましたー!」と言って握手を求めてきた。僕は半ば放心状態だったが、「クラブでも俺の新曲、全然イケルんだなあ。」と実感した。その後、刃頭君やうえP君といった音韻王者REC.の人たちとも、「こりゃあ、イケルよ。これからが楽しみだよ。多くの人々に俺たちの音楽が届くように、これからもがんばろうよ。」と肩を叩きあって、僕らの新たな船出を祝ったのでした。
次回は大阪のこと、特に最近お世話になっているソウル・バー Marvin のことを書きたいと思う。









